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遺言執行者の権限について

 
 
1.遺言執行者の権限について(2019年7月1日施行)
 

■条文■民法 第1012条(遺言執行者の権利義務)
第1項 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため相続財産の管理その他遺言の執行に必要一切の行為をする権利義務を有する
第2項 遺言執行者ある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
第3項 第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。
 
■条文■民法 第1007条(遺言執行者の任務の開始)
第1項 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
第2項 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく遺言の内容相続人に通知しなければならない。 
 
■条文■民法 第1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1項 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
第2項 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない
第3項 前2項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
 
■条文■民法 第1015条(遺言執行者の行為の効果)
    遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効果を生ずる。

 ■法改正の意義■
改正法(民法 第1012条第1項)により、遺言執行者は必ずしも相続人の利益のために職務を行うというわけではなく、遺言の内容を実現するために職務を行うことが明確にされました。(法的地位の明確化)
さらに、相続人が「遺言内容」や「遺言執行者の有無」を知る為に新たに遺言執行者から相続人に対する通知義務が新設されました。(民法 第1007条第2項)
 相続人は、遺言執行者がいる場合において、相続財産の処分やその他遺言執行を妨げる行為が禁止されていますが(民法 第1013条1項)、改正により、相続人による妨害行為が無効であることが明確化されました。(民法 第1013条2項)
 
これらの内容により、例えば、「特定の預貯金」を「孫」に「遺贈する」旨の遺言の場合、遺言執行者は、相続人(例えば配偶者や子)の為ではなく、受遺者である「孫」の為に、遺言内容を相続人に通知し、実際に「孫」の為(遺言内容実現の為)に遺贈の目的の預貯金の払い戻しを行うことができるものと解釈できます。

 

2.「相続させる」旨の遺言に関する遺言執行について(2019年7月1日施行)
 

■条文■民法 第1014条(特定財産に関する遺言の執行)
第1項 前3条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
第2項 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為することができる
第3項 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金にかかる契約の解除の申入れすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
第4項 前2項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
 

 ■改正内容の解説■
従来より、「特定の財産」を「特定の共同相続人」に「相続させる」旨の遺言は、判例法理(最判平3.4.19)により遺産分割の方法の指定として、特段の事情のない限り(その趣旨が遺贈であることが明らかであるか、又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り)は、何らの行為を要することなく、相続開始と同時に当該「特定の財産」が当該相続人に単独に承継されると解釈されてきました。
法改正では、「相続させる」旨の遺言を遺産分割方法の指定と明確に位置づけ、さらに法定相続分を超える部分についての対抗要件の具備が、原則、遺言執行者の権限となることが明確化されたと解釈できます。
また、預貯金の払戻し請求や、預貯金の解約申入れを行うことができる権限も遺言執行者に認める内容が明確化されています。
 

3.遺言執行者の復任権の行使要件の緩和について(2019年7月1日施行)
 

■条文■民法 第1016条(遺言執行者の復任権)
第1項 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
第2項 前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 ■法改正による変更点■
改正前では、遺言執行者は、「やむを得ない事由」がなければ、第三者に任務を行わせることができませんでしたが、法改正により「自己の責任」で復任できるようになりました。(やむを得ない事由がなくても復任できる)
つまり、原則と例外が逆転しています。
一般には、遺言書により、相続人の一人に遺言執行者の指定が行われた場合、必ずしも十分な法律知識を有していない場合も多く、遺言執行者の行う職務も広範なことから、適切に遺言内容を実現するには困難な場合がありました。
今般の改正により、遺言執行者の復代理人を選びやすくなったと考えることができます。
また、第三者に任務を行わせることについて「やむを得ない事由」があるときは、遺言執行者は、相続人に対して選任・監督の責任のみを負うものとされています。

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